木村榮「女友だち」

患者さんと世間話をしていたら、ふと

「私って友達がいないなあと思うことがあるのよね・・・」

大変社交的で毎日忙しそうな方で、
普段の話しぶりからして友達がいないどころかむしろ多いと思われるので意外だった。

「ご友人が多い人ほどそう感じるものかも知れませんよ。
皆、大なり小なり満たされないような感情を抱えていて
自分は孤独だなあと思いながらも普通に生活しているんではないでしょうか」

と返したら、そんなものかしらね、と微笑まれた。

年上の女性にエラソーなことを言った元ネタは
最近読んだ木村榮 「女友だち」
ここに、著者の友人Eのセリフとして
「私って友だちがいないんだなあと思うことがある」
というまったく同じつぶやきが出てくる。

10代の頃の自分はいつも特定の友達に固執していた。
私たちって仲がいいよね、と言葉や行動を通してしょっちゅう確認し
それが出来ない時は不安で仕方なかった。
違いを認め合うというよりも
同じ年齢の兄弟がいるとか、同じ音楽が好きとか、
共通点をひたすら探す付き合いだった。
ある時、当時仲良くしていた友人から
「友達ってその時々で変わっていくものだから
ずっと友情が続くってことはありえないと思う。」
というようなことを言われて
こんなに何でも話してるのに、
先はわからない程度のもの?とショックを受けたのだが
大人になってみて彼女は実に正しかった、と思う。
20年もたてば友人網も変化しているもので、
今の自分の環境に合わせてより関係が深くなった友人もいれば、その逆もある。
以前は気が合わないと思っていたようなタイプの人とも
そこそこ仲良くできるようになって余裕ができ、
決まった友人に何でも話しておかないと
距離が遠くなってしまうのでは、という無用な心配をすることもなくなった。
それでも、自分は友だちづきあいが下手だなあと思うことがあり
人生の先輩達の友情論を知りたいと思ってこれを読んでみたのだが
なんだ、年を重ねたからって
付き合い方がよりオトナになるわけでもないのね、
という当たり前のことにあらためて気付いた次第。
むしろ、老いや介護が絡んでくる分、
今よりも厄介になる場合もあるかもしれない。
書いた時間差があるのか、本の前半の勢いが
終板部分の老いに対する不安でかき消されているように感じられたが
そういうのも含めて女の人生、ってことなのかなあ。
寂しいということが何より怖い自分としては
誰の世話にもなりたくないなんて強がりは言わない年寄りになりたいし
元気でいられる限りは自分から常時他人の問題に首を突っ込んで
お節介を焼く側にまわるのも悪くないと思う。
とはいえ世話焼き婆になるためには
体力だけじゃなく、それを受け入れてくれる友人の存在が不可欠なので
皆の顔をひとりひとり思い浮かべつつ、
これからもよろしくね、と心の中でつぶやいてみた。
Date: 2012.10.31 Category: 本・雑誌・新聞記事  Comments (0) Trackbacks (0)
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「ここに来て良かった!」と心から言っていただける治療室を目指しています。

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